FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

クリスマスには願いを/カーラ・ケリー

 カーラ・ケリーのロマンスを読んで、心になにも残らなかったのは、これが初めてだ。物凄くつまらなくはないが、これまでのカーラ・ケリーの作品のように琴線に触れるものがない。ごくありふれたクリスマス絡みのロマンス小説である。
 楽しいはずのクリスマス。陽気だが無責任な亡父が、家族に残したのは莫大な借金のみだった。姉は誠実だが貧乏な牧師と熱烈な恋に陥っており、弟は放校になって帰ってきた。外交官の兄が連れて帰ってきた花婿候補は、ろくでもない男。兄と同じく外交官だという、顔に傷のある謎めいた男も一緒だった。
 当然、ヒロインがこの謎めいた男と恋に落ちて……という物語なのだが、これまで邦訳されているカーラ・ケリーの諸作品『ふたたび、恋が訪れて』、『放蕩貴族を更正させるには』、『あなたの夢に染まる丘』などの質や感動を求めると、多分がっかりする。
 この著者に初めて触れる読者ならばなんとも思わないのであろうが、当方のような従来のファンにとっては、せっかく彼女の作品を訳すならば、もっと別の作品にして欲しかった、というのが偽らざる本音である。

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)

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↑この三作はすべて傑作なのだ。