FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

真実の行方/グレゴリー・ホブリット監督

 良い評判は聞いていたが、実際に見たことはなかった法廷サスペンス。原作はウィリアム・ディールで、ベネッセコーポレーション(福武文庫)から出版されていた。
 これは、確かに面白い作品で、二時間を超える作品だということを忘れさせてくれる。
 検索して調べると、容疑者アーロン・スタンプラーを演じるエドワード・ノートンの世評が高いが、当方はノートンより、売名目的にアーロンの弁護を引き受け、部下を使って調査しているうちに事件にのめり込み、やがてアーロンの無実を信じるようになり、売名という本来の目的(?)を忘れ、アーロンを救うために動き出すマーティン・ヴェイル役のリチャード・ギアの方が印象に残った。この映画の結末、そしてマーティンが選んだ結末、見せた表情とともに。
 冬のシカゴ。豪邸に住む大司教が殺され、聖歌隊の青年アーロンが逮捕された。彼は鮮血にまみれた姿で、大司教の死体の傍らに佇んでいたのだ。大司教に会いに行き、唐突に記憶を失い、気がついたら死体の傍らにいたというアーロンの言葉をマーティンは内心で一笑に付した。アーロンが犯人だと判断していたが、自分の名前を売るため、アーロンの弁護士を立候補したのだ。
 だが、やがてアーロンがなにがしの精神面の障害を負っている可能性に気づき、専門家に鑑定を依頼する。そして大司教は聖職者でありながら、色と金のスキャンダルにまみれていた男であることが分かった。
 どんでん返しが何度もある作品ゆえ、ジェフリー・ディーヴァーのミステリ小説を読むときと同じよう、「ページ数(上映時間)がまだこれだけ残っているということは、まだあと一つぐらいトラップが待っているんだろうな。この設定でトラップと言えば……」という想定ができてしまうのがやや残念だ。
 お世辞にも後味がいいとは言えないが、紛れもない秀作。