FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ルームズ・フォー・ツーリスト/アドリアン・ボグリアーノ監督

 あれ。これって傑作じゃないか。
 『スパニッシュ・ホラー・コレクション』の一つ。もっともアルゼンチンの映画だ。字数の関係で入らなかったが、監督名は正しくはアドリアン・ガルシア・ボグリアーノ監督である。
 白黒の映画で、ダリオ・アルジェント監督が『悪魔のいけにえ』を撮ったかのような、美しさと鬼畜性が漂っている。典型的な「恐怖の田舎」ものに思わせつつも、意外なところに「謎と解決」が潜んでいる。
 アルゼンチン辺境の町サン・シモン。列車の中継地として、互いに見知らぬ五人の少女が降り立った。しかし、乗るはずだった列車が出発してしまい、彼女達は取り残された。どうやらこのサン・シモンには、カリスマ的な神父……もっとも、少女達の目から見れば、大変うさんくさい……がおり、村の人々は熱狂的に彼を信奉しているらしい。
 村の青年が、少女達に宿の提供を申し出る。自宅は旅人のための安価で安全な宿だと。明日まで列車は出ない。青年が弟と暮らしているのは、町からやや外れたところにある豪邸だった。彼ら兄弟の母親は、以前奇妙な死に方をしたらしい。やがて屋敷は閉ざされ、巨大な檻となり、少女達の上に惨殺の刃が振り下ろされる。
 典型的なスラッシャーものと思わせつつ、それだけでは終わらないのは、前述の通り、ちょっとしたミステリとしての趣向があるところだ。
 なぜ被害者がこのメンバーだったのか。
 なぜ死なねばならなかったのか。
 またクライマックスで、ある登場人物が苦境を逃れるために取った策、そこにいたる経緯にもはっとさせられる。そうやって自分の身を守るのか!
 スプラッター描写が結構激しいので、この手の描写が苦手な人は、避けた方がよし。
 余談になるが、惨劇の舞台となる豪邸にある体重計は、タニタのものである。少女の一人がその上に乗るシーンは、あることを暗示している。
 傑作。