FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

残穢/小野不由美

残穢

残穢

 同じ著者の『鬼談百景』とリンクした内容だそうだが、そちらは未読である。
 実話怪談風長編ホラー(風をつけて良かっただろうか)。心霊現象をまったく信じないという語り手は不明だがおそらくは小野不由美とおぼしき人物であり、平山夢明福澤徹三、両氏もそのままの名前で登場する。
 あるマンションの怪異を、淡々と追っていくお話である。マンションの住人に話を聞き、土地について聞き、結局さらに別の土地、別の怪異に流れついていく。
 最後に辿り着いた土地と、怨念の元となるものも怖いが、さらに怖いのが、語り手の肉体に起きた出来事である。体重減少、肩の痛み、腰の痛み、奥歯の痛み、そして原因不明の、首にできた激痛を与える「腫瘍状のもの」。読んでいても、痛々しいのだが、作者はあっさりとこれらの痛みの原因を「二十年近く前から患っていた正体不明の指の湿疹」としている。しかし、それだけの激痛、それだけの病状を引き起こす、「それ」とは一体なんなのか。 
 語り手はいい薬に出会って、身体の状態を良くなったことを喜んでいるが、読んでいて非常に不気味な印象を与える。ここが実話だったら、本当に怖い。
 淡々としているが、読みやすさは抜群。
 傑作。

鬼談百景 (幽BOOKS)

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