FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

紅はこべ/オークシイ

紅はこべ (1977年) (世界ロマン文庫〈1〉)

紅はこべ (1977年) (世界ロマン文庫〈1〉)

 作者がフランス貴族に同情的なのは、彼女がハンガリーの男爵家の出身だからなのだろうか。Wikipediaによると、二歳のときに小作人の反乱が起き、ブタペストに移ったとあるし。
 これまで読んだことのない古典を読みたいと思い、手に取った一冊である。
 安楽椅子探偵ものの『隅の老人の事件簿』で知られるバロネス・オルツィ(オークシイは英語読み。本名はエマースカ・マグダレナ・ロザリア・マリア・ホセファ・バルバラオルツィ・バーストウ。長い!)の歴史ロマンスである。
 当方は、フランス貴族をギロチンにかけられる運命から救う、イギリス紳士の物語としてしか知らなかった。それはその通りなのだが、これは同時にロマンス小説でもある。
 革命の嵐吹き荒れるフランス。卓越した知略と行動力を持ち、ギロチンにかけられるはずのフランス貴族を救いだしては、イギリスに亡命させている男と、その一味がいた。彼と一味は「紅はこべ」の愛称で呼ばれている。
 かつてのフランスの人気女優、現在はイギリス貴族にして大富豪のパーシーと英国に暮らす、才色兼備のマルグリートは悩んでいた。共和主義者の兄アルマンを人質にとられ、イギリス社交界の華という立場を利用し、「紅はこべ」の正体を探るよう、フランス人に脅されていたのだ。しかし、身近な男性が「紅はこべ」そのひとだったことを知り、彼を深く愛していることに気付いたマルグリートは、兄と愛する男の間で揺れ動く。
 「マルグリートよ、『紅はこべ』の正体が分かった途端、態度が変わり過ぎてないか?」などと思うが、それは自分の内なる感情にようやく気付いたのだと解釈していいのだろう。
 古典として長く読み継がれるだけはある、冒険とロマンスにあふれた華麗な物語だった。


バロネス・オルツィーのWikipediaはこちら

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AD%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A3


新訳 スカーレット・ピンパーネル (集英社文庫)

新訳 スカーレット・ピンパーネル (集英社文庫)

↑一番新しい訳だが、抄訳らしい。