FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

火の鳥と幾千の夜を/リサ・クレイパス

火の鳥と幾千の夜を (ライムブックス)

火の鳥と幾千の夜を (ライムブックス)

 帝国ロシアの貴族達をヒーロー、ヒロインに据えた、リサ・クレイパスの異色のシリーズ「ストークハースト家」もののの第二作である。第一作『眠り姫の気高き瞳に』のヒーローの娘、エマがヒロイン。ヒーローは、一作目では敵役だったニコラス公爵だ。
 一作目のヒロイン、タシアもそれまでのリサ・クレイパスにはなかなかタイプのヒロインだったが、この二作目の展開もなかなか意外なもので、読むものを楽しめませてくれる。
 殺人罪で祖国ロシアを追われ、ロンドンに亡命したニコラス公爵。美貌と富を持つ彼が、イギリスの貴族令嬢エマと出会ったのは七年前、弟ミハイルを殺し、ロンドンに逃亡した(と彼は思いこんだ)ミハイルの婚約者タシアを捕らえにイギリスに渡ったときだ。やがてニコラスもロンドンに亡命する。当時はほんの少女だったエマだが、やがて年月が経過するうちに赤毛で長身の魅惑的な女性となっていた。
 ニコラスは、エマの恋人を追っ払い、自分がエマの夫の座を手に入れる。しかし育った国、育った文化が違う二人の新婚生活はなだらかなものではなかった。
 エマもニコラスも苦悩する頃、手元に届いたやがて一枚の肖像画が、ニコラスを不思議な世界に引き込む。そしてニコラスは、やはりエマこそ運命の女と知るのだ。
 ベテラン、リサ・クレイパスの新境地。秀作。

眠り姫の気高き瞳に (ライムブックス)

眠り姫の気高き瞳に (ライムブックス)