安城家の舞踏會/吉村公三郎監督
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びっくりするほど面白かった。89分という短さながら、無駄なシーン、一つもなし。チェーホフ『桜の園』を下敷きにした映画で、戦後、没落し、屋敷を手放すことになった元伯爵家の人々が、最後に舞踏会を開こうとするストーリーだが、頽廃的な雰囲気で織り成される複雑な人間ドラマは、見ていて大林宣彦監督『廃市』を連想した(もっとも、『安城家の舞踏會』の方がはるかに早く製作されているのだが)
華族の特権と栄華を忘れることができない当主、結婚に失敗し実家に戻った、やはり華族の気位を忘れることのできない長女、時代に前向きに適応しようとする次女、なにも考えず、ひたすら享楽的な生活に身を浸そうとする長男……彼ら一族の屋敷を買おうとしているのは、がむしゃらに働いて富をなした、かつてのこの家の運転手だ。彼はずっと長女を愛し続けていた。元華族の一家は、この元運転手か、あるいは昔から付き合いのある商人に頼るしかない。しかし商人は、伯爵の肩書を失った一族を見放しつつある。この商人の娘と、元伯爵家の長男は婚約者だった。だが、長男は館で働く女中を愛人にしていた。
最初は、「ああ、これが伝説的な大女優の原節子か」などという気持ちで見ていたのだが、あとはこの世界に引き込まれ放しだった。落魄していくもの、これから力をつけてのしあがっていくもの、愛するもの、愛されるもの、憎むもの、憎まれるもの、たった一夜、そして舞台はほとんど館の中だけという限られたものなのに、幾つもの人間ドラマが愛憎劇が入り乱れ、名場面が繰り広げられていく。
不勉強ながら、日本の古い邦画はほとんど見ないのだが、これは良かった。
大傑作。
- 作者: チェーホフ,小野理子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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