FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

凍てついた墓碑銘/ナンシー・ピカード

凍てついた墓碑銘(ハヤカワ・ミステリ文庫)

凍てついた墓碑銘(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 大好きな「過去の罪は長い尾をひく」タイプのミステリだ。住人の互いに誰もが顔見知りでありヴィレッジ・ミステリの趣もあり、またロマンス小説の要素もある。いい!
 カンザス州の田舎町。吹雪の夜に、それは見つかった。身元不明の、若い娘の全裸死体。彼女が誰かは結局分からず、どのような経過で死んだのかもよく分からず、そのまま墓地に葬られた。17年の月日が経過しても、名無しのこの女性は、人々の心から忘れられることはなかった。この事件を契機に、理由も分からず恋人ミッチと引き離された女性アビーも含めて。当時十代だったアビーは、今では働く大人の女性となっている。やがて吹雪の夜、ミッチの母にして、今はアルツハイマー症に冒されているナディーンが、例の娘と似たような死を遂げた。そしてミッチが町に帰ってくる。
 上記の二人に加え、彼らの幼馴染であり、保安官の息子であり、長じて自分自身も保安官となるレックスが主たる登場人物である。彼らは互いに親しい間柄だが、それぞれ打ち明けていないことだってある。「誰か、なにを、どれだけ知っているか」……薄紙が一枚一枚剥がれるように真相が明らかになっていく過程こそがスリリング。犯人は本当に嫌な奴である。
 秀作。