FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

訪問者/恩田陸

訪問者

訪問者

 まっとうなミステリだよ!『きのうの世界』みたいに、物語の結末が明後日の方向にとんでいってないよ!シンプルだが良く出来たゴシックサスペンスで、実に面白い。恩田陸はもう少し、こういった話を書くべきだと思う。いや頼むから書いてほしい。
 西洋館にほとんど限定された舞台、登場人物達に暗い影を投げかける過去の事件、生者によって語られる死者の思い出、死体の出現、作中に出てくる映画、二転三転するプロット、不気味な余韻(しかし素直に「それもありえる」と頷ける)といい、大傑作とまでは言えないが、練られていて楽しめる。
 山中に佇む壮麗な洋館。この洋館の女主人であり、偉大な実業家だった朝霞千沙子は三年前に、近くの湖で謎めいた死を遂げた。母親が千沙子の学生時代の後輩で、幼児の頃から彼女の庇護を受けて育った映画監督、峠昌彦も不思議な状況で死んだ。どうやら千沙子は母一人子一人の家庭の生まれの昌彦に、彼の父親は朝霞家と関わりの深い人間だと話しており、昌彦もそれを信じていたようだ。
 嵐の夜、昌彦の遺言状が公開されるため、屋敷を訪れるものたちがいた。一方、館には訪問者を待ち受ける朝霞家の関係者達がいる。実業家と映画監督の死の謎、そして新たに館に転がる死体の正体とは。
 彼女にしては珍しく地に足の着いた話。これは褒め言葉として意味で言っている。『木曜組曲』みたいに、映画になればいいなと思う。舞台劇にしても面白そうだ。

木曜組曲 [DVD]

木曜組曲 [DVD]