パンズ・ラビリンス/ギレルモ・デル・トロ監督
- 出版社/メーカー: CKエンタテインメント
- 発売日: 2008/03/26
- メディア: DVD
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あまりにも有名になり過ぎていて、これまで見なかった。今回正月休みを契機にDVDを手にとったのだが、このタイミングで見なくとも、人生の途上のどこかで出会っただろうと感じさせる映画だ。
一九四四年、スペイン。内戦は終結したものの、独裁政権に反抗するレジスタンスは活動を続けていた。内向的で夢見がちな少女オフェリアは妊婦である母カルメンとともに山奥の屋敷へと向かっていた。カルメンが軍人ビダル大尉と再婚し、彼とともに暮らさなければならないから。ビダル大尉はレジスタンス掃討を指揮する軍人で、残虐なることこの上ない男性だった。カルメンが生むであろう男児を切望しており、オフェリアを疎ましがっている。そしてオフェリアもビダルを憎み、恐れていた。
やがて精神的に抑圧された日々を送るオフェリアのもとに、異形のものが訪れる。牧神パン。彼はオフェリアに告げた。実はオフェリアは異世界の姫で、今はただ人間の世にあるだけなのだと。そして三つの試練を乗り越えれば、プリンセスとして元いたところへ帰ることができるのだと。オフェリアはパンの言葉を信じ、試練に立ち向かう。
一方、オフェリアを取り囲む大人たちの世界は過酷さを増していた。体調の優れなかったカルメンの病状は重くなるばかり、ビダル大尉はゲリラ狩りにいっそう血道を上げ、ビダル大尉のすぐ傍らにいるゲリラの協力者達は体制側の軍人を恐れ、同時に憤っていた。
グロテスクにしてきれい。蟷螂が妖精へと変化する瞬間にはっとした。そしてなにより少女を誘い、試す牧神の妖しいこと、神秘的なこと……このパン、醜いくせに美しい。
ヒロイン、少女オフェリア(いかにも不幸に終わりそうな名だ)の無垢さと儚さを具現化したかのようなイバナ・バケロもいいが、知性と行動力ある使用人メルセデスを演じたマリベル・ベルドゥもいい。
ダーク・ファンタジーの金字塔。不気味さと美しさってこれほどまで見事に両立するんだな、とこの映画の怪物達を見て思う。