FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

死体にもカバーを/エレイン・ヴィエッツ

死体にもカバーを (創元推理文庫)

死体にもカバーを (創元推理文庫)

 ダントツ。
 ここ数週間、様々なコージー・ミステリを読んだのだが、このエレイン・ヴィエッツのヘレン・ホーソーンのシリーズが頭一つ分抜けて面白かった。ジャンルで分ければコージー・ミステリになるのだろうが、脳裏に浮かんだのがジャネット・イヴァノヴィッチのステファニー・プラムのシリーズだ。あれに通じるテンポの良さ、ユーモアが感じられる。
 ヘレン・ホーソーンは南フロリダに住む四十二歳。かつてはキャリアウーマンのお手本となるような高給取りだった彼女は、ある事件が原因でアメリカのあちこちを逃げ回る逃亡犯と化した。自分の居場所を極力隠さなければならないため、給料を現金で受け止ることができる、限られた場所でしか働くことができない。
 ヘレンが働いているのは、「ページ・ターナーズ」という書店。来店する客はいい人から、やたら騒ぐアホ子供からそれを注意しないもっとアホな親(日本にもいるなあ)、その子供を狙う変質者(日本の書店にもこの種の変質者はいるだろう)まで色々といるのだが、どの客よりも性質が悪いのは傲慢極まりないオーナー。彼が殺され、同じアパートに住む友人に嫌疑がかけられ、ヘレンは調査に乗り出していく。
 アパートメントの大家である豪快な老女マージョリーから、「ページ・ターナーズ」の夜勤支配人、同性愛者の女性ゲイルまでたちにたちまわっているキャラクターが魅力。
 コージー・ミステリのヒロインと言えば、さしたる美点まで見出せないような女性まで、複数の色男にちやほやとされるのが定石なのに、元夫から現在進行形の恋人まで現れる男性はろくでなしばかり。こんなヒロインはいなかった。すごいよヘレン!ストーリーテリングの楽しさと、君の男を見る目のなさは、ピカイチだ(本人は嬉しくないだろうが……)
 これがシリーズ二冊目なのだが、ネタバレが抑えられているため、この巻から読んでも問題はまったくなし。
 コージー・ミステリのファンはむろんのこと、女探偵もののミステリのファンにまでお奨めしたい。次の職場でも、嵐に巻き込まれるんだろうな、この人。