死写室/霞流一
- 作者: 霞流一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
映画絡みの人間ばかりの容疑者、時として奇抜すぎてついていけなくなるトリック(実際の殺人にはどれもお奨めできない)、一般人には到底ついていけないマニアックすぎる犯人もしくは被害者もしくは目撃者の心理。映画関係者に溶け込みつつ事件を解決するのはお馴染み紅門福助。どれもいつも通りの霞流一である。短編集という点以外は。
これはなかなかの粒揃い、霞流一のファンをも喜ばせ、「初めて霞流一を読む」という人間には試金石となるであろう。これを受け付けることができなければ、おそらく彼のほかの作品を読んでも面白くないであろう。
表題作「死写室」は、前述の「映画絡みの人間ばかりの容疑者、時として奇抜すぎてついていけなくなるトリック、一般人には到底ついていけないマニアックすぎる犯人もしくは被害者もしくは目撃者の心理」をすべて網羅した怪作。被害者も変ならばトリックも変。この作家に関して言えば、この怪作という言葉は褒め言葉だと慌てて付け加えておこう。同じ意味では「ライオン奉行の正月興行」も犯人の言動を考えてみると、相当シュールだ。
「届けられた棺」、「首切り監督」、「スタント・バイ・ミー」あたりもよくできた秀作で楽しめる。