ロジャー・マーガトロイドのしわざ/ギルバート・アデア
ロジャー・マーガトロイドのしわざ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1808)
- 作者: ギルバート・アデア,勝呂忠,松本依子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/01/11
- メディア: 新書
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「ミステリの枠を破る超ミステリ」などと帯に書いてあるから、かえって不安になった。つまりは読了した瞬間、壁に向かって投げつけたくなる類のミステリではないかと思ったのだ。
しかし杞憂に終わった。なかなかまっとうなミステリである。一時期の新本格の作家が書きそうなタイプの作品で、これは褒め言葉として言っている。
吹雪の山荘といういかにもな舞台に集うのは、軍人、医師、牧師、女優といったいかにもな面々。そして皆の弱みを握っており、人の神経を逆撫でし続けるゴシップ記者の死体といういかにもなものが転がる。
解説で若島正が指摘するよう、むろんこのミステリはクリスティー『アクロイド殺し』を彷彿とさせるものだが、あのミステリの醍醐味を知っているものは(以下ネタバレのため省略)、ともかく一ひねりが加えてある。
ギルバート・アデアについて、これまで「書くものはそこそこ面白いが印象に残らない作家」だと思っていたが、これには好感を持った。