そしてミランダを殺す/ピーター・スワンソン
『時計仕掛けの恋人』があまり琴線に触れなかったので、期待していなかったのだが、とても良かった。まだ三月だが、間違いなく2018年度ベストミステリの一冊である。三部構成の犯罪小説で、各所で読者を驚かせる爆弾が仕掛けられており、球技のボールにされたかのように読者はあっちこっちに振り回される。
空港のバーで見知らぬ美女リリーと知り合ったテッド。妻ミランダの不貞を知っているテッドがミランダの殺害計画を口走ると、リリーは彼の殺意を肯定し、ミランダ殺害計画への協力を申し出てくれた。
そしてテッドはミランダ殺害計画を進めるが、読むものの脳裏にはクエスチョンマークが浮かぶ。リリーの正体とその真意に対するクエスチョンマークだ。テッドによる殺人計画と交互に、リリーの生涯が語られていく。
『そしてミランダを殺す』という邦題もいい(原題はThe Kind Worth Killing、「殺されて当然の者たち」)。『そしてミランダを殺す』というタイトルには、ミランダを殺す以前の段階になにかあったように感じられるし、そして実際に読むと思わずにやりとさせられる。
意外性と読ませる力を兼ね備えた力強い傑作。