FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

謎の毒親 姫野カオルコ

 残念な事実だが、我が子を虐待する実の親は存在する。しかし、その虐待の内容が、理由が羞恥とはまた別に他人に言いづらい、というか説明しづらい虐待をする親がいる。
 これは夫婦と一人の子の関係を主軸に描いた小説である。
 夫婦の間に遅くにできた一人娘。彼女は両親に虐待される。死ぬほどひどい暴力を受けるわけではない(暴力と暴言はよくあるけれど)。性的嫌がらせも受ける。これはいやな表現になるが、それさえ虐待のメインではない。ネグレストに近いことをされるが、ネグレストそのものを受けるわけでもない。
 彼女の親はどちらも、娘には、いや余人にはまったく理解できない独特の思考回路の持ち主なのだ。つまり、まったくマイナスの意味合いでの変人だ。父母の両方が、である。そして二人は結婚したことで不満と不幸をさらに溜め込んでいる。だけど離婚しない。
 精神を病んでいるわけではないのだろうが、あまりにも考えに偏りが感じられるので、神経を病んでいる可能性は大いにある。発達障害かもしれない。しかし本人たちは自分がまったくの正常だと思い込んでいるので、治療だとかカウンセリングだとかという選択はそもそもそもない。
 こういった両親の間に生まれた子は、己の父母の言動が突飛すぎて理解できない。なぜ、そんなときにそんなことを言うのか、するのか。娘も理解できないし、その場に偶然他人が居合わせていても理解が不可能である。なぜなぜなぜなぜ、と苦しみながら成長する。多分この家に生まれた子はすべてなぜなぜなぜなぜと苦しむのではないだろうか。
 寒気のするような傑作。こんな家で育つ子供が一人でもいなくなりますように。