FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

恋人と呼ばせて/メアリ・H・クラーク

恋人と呼ばせて (新潮文庫)

恋人と呼ばせて (新潮文庫)

 ロマンス小説のようなタイトルだが、実際にはサスペンスである(作中の会話から察して『恋人と呼ばせて』というラブソングがあって、そこからタイトルが取られたようだ)
 メアリ・H・クラークは、初期の『子供たちはどこにいる』が図抜けた傑作。単に彼女の作品の中でも特別良くできているというに留まらず、現代の女性ミステリ作家の手によるサスペンスの中でも、屈指の出来栄えである。そののちに書かれた作品は、やや通俗味を増し、マンネリズムに陥ってはいるものの、どれもそこそこ面白い。
 アメリカはバーゲン郡。検察官事務所の検事補で、離婚して幼い娘ロビンを一人で育てているケリーは戸惑っていた。交通事故に巻き込まれたロビンの治療のため、母娘は形成外科医チャールズ・スミスの元へと向かった。そこである女性の顔を見たとき、どこかで見た美貌だとケリーは既視感を覚えたのだ。やがて疑問は解消された。女はスミス医師の娘、シューザンに酷似していたのだ。シューザンはかつて夫であるスキップに殺害されたとされている。しかもスミスが手術を施し、シューザン瓜二つにした女性は一人ではなかった。医師である父親が、美容整形によって、殺された娘のそっくりさんを次々と生み出している。あからさまに不自然な事態に、ケリーは考え込む。やがてケリーはスキップの無実を信じる弁護士ジェフリーと知り合い、シューザン殺人事件を追うこととなる。
 「彼は狂人なのか」、「殺人犯人は誰なのか」、「ヒロインの恋愛はうまく行くのか」、「なぜこんなうさんくさい人間ばかり出てくるのか」と疑問は尽きず、いくらか大味な作りながら、楽しみは盛りだくさんのミステリある。


子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

↑傑作