消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿/翔田寛
消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿 (ミステリ・フロンティア)
- 作者: 翔田寛
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: 単行本
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全体に品があって、文章がきれいで、登場人物にも好感がもてる。けれど謎解きとしてはミステリ・フロンティアの中でも小粒、翔田寛のミステリとしても小粒なものである。
明治六年、日本人と西洋人、どちらにとっても異国情緒漂う横浜居留地に英国紳士の名探偵登場。ホームズ役は新聞記者ワーグマン、ワトスン役はワトスンと同じく医師のウィリス。冷静なで礼儀正しく好奇心豊かなワーグマンが、おっちょこちょいで食いしん坊のウィリスを引き連れ、様々な理由で極東の地を訪れた西洋人、そして時代の変化のために彼らを受け入れることとなった日本人、双方の心を騒がせる事件の謎を解く。
幽霊目撃事件……それも幽霊には和風と洋風、どちらも一人ずついた……だとか、英国紳士の切腹事件だとか、密室の教会堂内から二人の少年の死体が見付かった事件だとか、それぞれあらすじを聞くだけならば面白そうなのだが、妙にどれも印象が薄い。六つの短篇のうち、もっとも主も面白かったのは表題作にもなっている「消えた山高帽子」だろうか。
愛し合う若き二人の男女の父親は、それぞれが互いを憎みあう商売敵同士。許されぬ恋人達とその父親達、ワーグマン、ワーグマンとも懇意にしている歌舞伎役者も出た市川升蔵が出席したパーティーでろもワーグマンのものを含めて三つの山高帽子が消えた。その謎は?そして恋人達の未来は?
「可も不可もなし」よりはずいぶんと「可」に近い。精巧な謎解きは期待できないものの、嫌味のない作風なので、肩が凝らずに読める。翔田寛はわざと気楽な読める作品集を書いたのだろうか。