偽りの銃弾/ハーラン・コーベン
これは面白かった。力強くぐいぐい読ませ、しかも読むものを驚かせる罠がいくつも待ち構えている。
元陸軍大尉のヒロインの懸命の調査と彼女の熱い魂のたどる道程と結末、そして魅惑的な謎とその解決など盛り沢山の楽しみがある。
元陸軍大尉、戦闘ヘリのパイロットだったマヤ。富豪一族出身のハンサムな夫ジョーは殺人事件で生命を失い、それ以前に仲のいい姉クレアは拷問のすえ殺害されるという酷い末路を遂げた。そしてマヤは愕然とすることになる。幼い娘の身を案じて自宅の設置した隠しカメラに、死んだはずのジョーと思しき人物の姿が映っていたのだ。
なぜカメラに死んだはずの夫が映っているのか、そしてごく普通の女性であった姉があれほど酷い死を迎えなければならなかったのか。
クールでハードなマヤはかっこういい一方、その思考、その言動に危険なものも感じさせる。そしてふと読み手にこう思わせるのだ。マヤは本当に真実を口にしているのだろうか、と。
傑作。ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』に続き、2018年度のベストになるかも。
これからもハーラン・コーベンのノンシリーズのミステリ、そしてマイロン・ボライターのシリーズの続巻の出版(マイロン・ボライターのシリーズはむしろ既刊の復刊が先か)を待っています。