FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

渇きと偽り/ジェイン・ハーパー

 5月22日に感想をアップしたアトム・エゴヤン監督『手紙は憶えている
http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20170522
はおそらく2017年、私が見た映画でおそらくもっとも面白いミステリ映画となるだろうが、このジェイン・ハーパー『渇きと偽り』はもっとも面白いミステリ小説の一つに、きっとなる。
 オーストラリアの新星によるデビュー作ではあるが、デビュー作とは思えぬ骨太の物語と犯人当ての楽しさで読ませる作品だ。
 メルボルンの連邦警察に努めるフォークが二十年ぶりに帰った故郷で、人々はひどい干ばつのため苦しんでいた。かつて恋していた少女が死に、しかも少女殺しの犯人ではないかという疑惑をかけられ、石もて追われるがごとく、父とともに逃げ出した故郷だった。二十年という年月が経過した今でさえ、フォークを白眼視するものはまだいる。
 苦々しい思いを抱きながらも故郷に舞い戻ったのは、親友の葬儀のためだ。しかも親友はまだ赤ん坊だった娘以外、妻と幼い息子を殺し、自殺したというのだ。しかし本当に親友が犯人だったのか。
 甘くもあり、苦くもあった過去の青春時代とその酷い終焉、干ばつによる大地の渇き、そして干ばつが土地の人々にもたらした生活苦、田舎特有の閉鎖的な人間関係、いまだフォークを犯人と信じる人々の嫌がらせ、すべがひりつくような苦しさを持つ物語である。その中でひたむきに謎を追い、鮮やかな解決をもたらすフォークの姿が一服の清涼剤となっている。
 傑作。

↑傑作ミステリ映画