FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

クリムゾン・ピーク/ギレルモ・デル・トロ監督

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 絢爛たるゴシックホラーである。ゴシックロマン、ゴシックサスペンス、ゴシックホラー大好きな当方にとっては、宝物のような映画である。しかしながら「衣装や風景はびっくりするほど美しいが、これってすごいありふれたお話だよなあ。ストーリーにもびっくりするところはなにもないし」と考える人がいてもまったくおかしくない映画でもある。
 ゴシックホラーの王道をまっすぐに、本当にまっすぐに歩むがゆえ、のことだ。しかも館に出現する死霊よりも、生きている、某登場人物の方がはるかに恐ろしい。
 20世紀初頭のニューヨーク。裕福な実業家の娘イーディスは幽霊が時折見える体質であり、そして幽霊の出てくる物語を書き、小説家を目指していた。そんな折、イギリスの準男爵、発明の資金を募るため各国を回っているトーマス・シャープ、そしてその姉ルシールと出会う。父の死後、気落ちしていたイーディスはトーマスと結婚し、海を渡った。
 屋敷は広大ではあったが、荒廃したものだった。やがてイーディスはこの屋敷と、シャープ姉弟にまつわる恐ろしい秘密を知ることとなるのだ。
 ゴシックものに登場するとうれしいものの1つに、魅力的な悪漢の存在があるが、このトーマス・シャープ、悪漢と呼ぶにはあまりにも情けなく、主体性(悪事にせよ、善きことにせよ)が足らず、どうにも残念な登場人物だった。