埋葬された夏/キャシー・アンズワース
発売される前から気になっていたのだが、実際に買って読んでみると、めちゃくちゃ好みのタイプのミステリで、なおかつ面白かった。まだ5月だが、2016年度海外ミステリのベスト5には入るだろう。
パット・マガーではないが、『被害者を探せ!』風のミステリで、今から20年前、16歳の少女コリーンが人を殺し、治療施設に入れられたことは最初から分かっているが、いったい誰が殺されたのかは明記されていない。
コリーン。その異様な風体から、<異形>というあだなをつけられ、町の主流派から嫌われ疎まれていた少女。彼女は、親と呼ぶのもはばかれるほどの屑の親がいて、凄惨な虐待を受けていた。しかし同時に友人がおり、好きな男の子がいて、好きなものがあって、しっかりとしたソーシャル・ワーカーが見ていてくれて、将来の展望すら開けそうになっていた。
そして物語の中には、一見そうとは見えないものの、あからさまにコリーンより<異形>と呼びたくなる少女が出て来る。険悪な関係の家族。動物虐待。動物殺し。人を操るのが巧み。他者の人間関係を破壊する。そう、転校生のサマンサだ。
このミステリは現在と過去のパートにわかれ、現在のパートは新たに見つかった証拠をもとに私立探偵が当時の事件を洗いなおしていく体裁を取っている。
読者はどのような経緯をたどって、いかなる殺人事件が発生したのか、コリーンやサマンサの周囲の人間がどのような人生をたどったか知りようになり、その結果には「この人が被害者だったのか!」以上の驚きを味わうこともある。
ある登場人物たちには、もっと悲惨な目に遭ってもらいたかった。
傑作。