さよならの手口/若竹七海
これは凄い。昨年読んでいたら、ベスト3に入れていたことは確実だ。同じ作者の短編集『暗い越流』も昨年の国内ベスト3に入れていたのだが、それすら凌ぐ。言うまでもないが『暗い越流』も相当によくできた短編集である。最近の若竹七海は充実している。ぜひとも葉崎市シリーズの次の長編も早く出してほしい。
『プレゼント』、『依頼人は死んだ』、『悪いうさぎ』に続く、久しぶりの葉村晶シリーズの四作目である。毎度毎度嫌な目に遭わされる葉村晶、今回ももちろん嫌な目に遭うのだが、彼女が強くなったのか、後味がそれほど悪くない。
今回葉村晶は様々な問題を調べ、もしくは巻き込まれるのだが、主軸となるのは元女優の娘探しである。家庭の悲劇を扱った、ロス・マクドナルド風の……もっとも失踪人探しというテーマは、夫人マーガレット・ミラーを連想させられる……物語だが、陰鬱さを和らげているのは、語り手の乾いたユーモアである。
目をカッと見開く銭湯のお婆さんに笑った。富山店長の鬼畜ぶりにはもっと笑った。モデルはやはり老舗出版社の元社長、元会長さんなんだろうか。
『さよならの手口』というタイトルの意味が分かるラストも粋。
ベテランの実力がいかんなく発揮された傑作。そして現時点での若竹七海の最高傑作。
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