FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

犯罪心理捜査官セバスチャン/M・ヨート H・ローセンフェルト

 文字数の関係で、タイトルには入りきらなかったが、作者の名前はそれぞれミカエル・ヨートとハンス・ローセンフェルトで、どちらもがスウェーデンの人気脚本家のコンビである。
 ミカエル・ヨートは、映画監督、プロデューサー、脚本家で、ヘニング・マンケルの〈刑事ヴァランダー〉シリーズやカミラ・レックバリの〈エリカ&パトリック事件簿〉シリーズの映像化に関わっている。そしてハンス・ローセンフェルトは脚本家以外にも、人気司会者としての顔があるという。二人とも多彩な才能の持ち主だ。
 実は最初は手に取るかどうか悩んでいた作品だった。猟奇的殺人+変人で暗い過去を持つ天才型の主人公。わりとありふれた設定だし、サイコサスペンスはあまり得意な分野ではない。
 しかもこの主人公の中年男性、中毒の一つが性交で、事件関係者にも平然と手を出す(そうすることで、相手の懐に潜り込み、事件に関する情報を聞き出そうとしているわけではない。ちなみに相手の社会的立場や、配偶者がいるかどうかは、まったく気にしていない)。
 ご本人はちらりとしか悩んでいないが、性病の感染、セクハラもしくはパワハラで告訴されること、そして手を出した女性本人やその恋人や配偶者の怒りなどは怖くないのだろうか。
 前述の通り、物語にのめり込めるかどうか不安だったが、実際に読んで見ると、とても面白かった。作者のコンビは二人とも、小説はこのシリーズが初めてとのことだが、それまでに脚本執筆で培ってきた筆力が、小説執筆にもしっかり反映されている。
 心臓が抉り取られた、惨たらしい死体が出て来るが、単なる猟奇的殺人事件を売り物にしたミステリではなく、犯人当ての醍醐味もある。さらに読者は事件解決後に待っていた、あの展開に驚くであろう(と書くと、分かってしまうだろうか)
 傑作。
 シリーズ次回の翻訳が待たれる。