海賊王と秘密の楽園/サブリナ・ジェフリーズ
イギリスを舞台にした著者のリージェンシーロマンス(イギリスハノーヴァー朝の国王ジョージ四世が、摂政皇太子であった1811年〜1820年を舞台にした歴史ロマンス小説。ただしリージェンシーを謳いながら、ここよりややずれた時代を舞台にしている作品もまま存在する)も、マンネリになってきたかなというときに出版されたロマンス小説。実際、扶桑社ロマンス文庫から出版された『ストーンヴィル侯爵の真実』が、つまらなくはないが実にマンネリズムに陥った内容だったので、嬉しい一冊だった。
19世紀、オーストラリアに向かう女囚運搬船に教師と偽り乗り込んだ貴族の娘が、自分や配下の妻になってくれる女性達を求めて船に近づいた海賊王と出会い、ともに海賊達の本拠地である島を目指すというストーリーで、セクシー、ゴージャス、ドラマティックとツボを押さえたロマンス小説だ。
訳者があとがで書いているよう、ヒーローやヒロインばかりではなく、脇役達にも精彩があり、彼らのロマンスも楽しめる。
設定が筆者としては風変りだが、サブリナ・ジェフリーズの華やかな作風はいつも通り堪能できる……が、シリーズの二冊目は、ヒロインの義兄である放蕩者の貴族と、牧師の娘のロマンスということで、やはりいつもの作風に戻ってしまうのだろうか。