黒のクイーン/アンドレアス・グルーバー
作者アンドレアス・グルーバーは、オーストリアのミステリ作家。北欧のミステリはずいぶん紹介されるようになったが、ドイツ以外の中欧、東欧のミステリはまだ珍しい。
『夏を殺す少女』では、型に嵌った謎と解決にやや不満があったが、この『黒のクイーン』はもともと短編のホラー小説を書いていた作者の面目躍如たるところがあり、猟奇的な連続殺人事件がもたらす恐怖と緊張感、古都プラハの妖しい魅力、そしてゴーレム伝説と、事件に深く関わりを持つ監督の古い映画パウル・ヴェゲナー監督『巨人ゴーレム』が醸し出す怪奇的雰囲気のすべてが合わさり、ゴシックスリラーとも呼びたくなるような独特の雰囲気が漂っている。
主人公であるウィーンの私立探偵ホガートはモノクロ映画を偏愛しており、実際に作中でくだんの『巨人ゴーレム』を鑑賞する場面があるのだが、この『黒のクイーン』も白黒の映画にしてみたら面白そうだ。
ウィーンで暮らす保険調査専門探偵のホガートは、調査に派遣されて失踪した美術品の保険調査専門探偵を探すため、チェコのプラハへと渡った。そして猟奇的な殺人事件に巻き込まれる。
ぜひともオーストリアのウィーンを舞台にした第二作、ハンガリーのブタペストを舞台にした第三作も読みたい。日本では少々珍しい、すべてが東欧を舞台にしたミステリのシリーズになりそうだ。
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