FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

原罪/チェルシー・ケイン

 《ビューティ・キラー》シリーズ第五作。
 どんな傑作シリーズでも五作目になるとだれてくる。しかもこのシリーズはグレッチェンが捕まっても、「おそらくはなんらかの手段で脱走するだろう」と思わせるため、なおさらだ。そこで作者はグレッチェンの過去を小出しにして、読者の興味を繋ぎ止めている。これは解説の霜月蒼が指摘するよう、作者チェルシー・ケインの知的な計算、バランス感覚が発揮されたところだろう。
 これまで一切の差別なく老若男女大勢の人々を殺し続けた《ビューティ・キラー》グレッチェン。犠牲者は一説には二百人と言われている(小さな町なら全滅しているところだ)。彼女の犠牲者とされる中には幼い子供達もいたが、グレッチェンは子供殺しに関してでかは語らなかった。
 犯罪者専用の精神病院に収容されているグレッチェンは、彼女が狂おしいほど執着し、また執着されてもいる刑事アーチーに語る。ある男が自分の子供を狙っている、と。嘘つきで、他人を操る天才のグレッチェンの言葉など、アーチーは一笑に付した。しかし、発生した陰惨な連続殺人事件は確かにある形でグレッチェンの過去と結び付いていた。
 前述のグレッチェンの過去は大体想像通りだが、なによりもそして「グレッチェンの子供」の意外性、そして連続殺人事件の真相、そして最後のアーチーとグレッチェンの攻防など、読みどころはたくさん。
 多分前作、スピンオフ的な『昏い季節』を読んでいた方が、驚きと、そして鬱度が増すと思われる。嗚呼……。

ビューティ・キラー1 獲物 (ヴィレッジブックス F ケ 3-1)

ビューティ・キラー1 獲物 (ヴィレッジブックス F ケ 3-1)

ビューティ・キラー2 犠牲 (ヴィレッジブックス)

ビューティ・キラー2 犠牲 (ヴィレッジブックス)

ビューティ・キラー3 悪心

ビューティ・キラー3 悪心