ジャンゴ 繋がれざる者/クエンティン・タランティーノ監督
痺れた。
音楽にも、ストーリーにも、映像にも。
165分という時間があっという間に過ぎていく。
これまで見た映画の中で、これほど完成度が高かったのは、ロマン・ポランスキー監督『ゴーストライター』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20120210)、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』並びに『インセプション』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20101004)ぐらいだ。
登場人物誰もが曲者揃いで、もっとも個性が乏しかったのが、「囚われの姫君」役であるヒロインのブルームだった。
まだアメリカに奴隷制があった時代。元歯医者、現在は賞金稼ぎのドイツ人のドクター・キング・シュルツに拾われた黒人奴隷のジャンゴ。
自由の身となった彼は、シュルツとともに賞金稼ぎとして働きながら、かつてともに逃げようとして奪われたやはり奴隷の妻ブルームを探す。ようやく居場所が分かったとき、ブルームは農場主カルヴィン・キャンディ……奴隷同士の死闘を楽しむ陰惨な趣味を持つ男……に所有されていた。シュルツとジャンゴは、奴隷商人のふりをしてキャンディの屋敷に入り込む。
ストーリーとしてはよくあるもの、そして王道のものだ。苦しい環境にある若者が年上の男の助力を借り、邪悪な敵を打ち倒し、囚われの美姫を救う。
ただこの映画の特異な点の一つは、「邪悪な敵」の中に、自分自身黒人である奴隷頭スティーブン(大ベテラン、サミュエル・L・ジャクソンの演技が凄い)と、未亡人であるキャンディの姉ララがいる点だ。
二人とも知性がないわけではない。その証拠としてスティーブンもララも、キャンディより早く、シュルツとジャンゴの正体、その目的に気付いた。
しかし、スティーブンは白人よりもさらに過酷に黒人を蔑視し、支配し、キャンディに忠誠を誓う。その忠誠心が偽物でないことがかえって物哀しい。
ララはララで、上品で物腰優しい南部美人の典型だが、弟の行為にはなんらの疑問も持たない。おそらくは当時の上流階級の女性のほとんどがそうだったように。しかし正直に言えば スティーブンはともかく、この人まであの結末だとは思わなかった。
これまで見よう見ようと思いながら見逃していた『イングロリアス・バスターズ』もちゃんと見るぞ。
大傑作。
余談だが、物語の後半に出てくる鉱山会社の社員を見たとき、「地味な顔の役者さんだな」と思っていたが、あれはクエンティン・タランティーノ監督本人だと知り、驚き笑う。
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