穴/ニック・ハム監督
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原作はガイ・バート十八歳のデビュー作。『体験のあと』というタイトルで集英社から、『穴』という題名でアーティストハウスから出版されている(いた)。
「藪の中」風のミステリでもあり、ショーン・バイルン監督『ラブド・ワンズ』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20130718)を思わせる歪んだ愛……愛というより、執着と支配欲か……の物語である。
イギリスの若葉香る春。名門パブリックスクールから、四人の生徒が姿を消した。十八日後、戦争のおり、通路や防空壕として使われて穴の中から、リズという少女だけが生還した。傷だらけで、憔悴しきっており、錯乱していた。すぐに入院することとなり、ある程度回復したのち、女医が話を聞くこととなった。
だが女医にリズが語ったのは、とても真相とは思えない話、実際にリズが発見された当時の事実とはまったく異なる夢物語だった。
そして、リズが自分を含めて四人を、外から穴に閉じ込めたと名指しされた、同じ学校の少年マーティンは、警察に向けて別の犯人を挙げ、そしてまったく違う事件の顔を語った。
一体、誰の言うことが正しいのか。
「謎とその真相」は比較的すぐ察しがつくものだが、話の転がし方がうまいのか、二転三転する様相には思わず引き込まれる。ラストも後味が悪く、おぞましいものである。
ミステリ映画だが、穴に閉じ込められた四人の高校生の飢えや渇きの悲惨な状況や、黒幕がもたらす恐怖など、ホラー映画にある程度の耐性がないと見るのがきついだろう。
秀作。
余談ながら、同じくニック・ハム監督『マーサ・ミーツ・ボーイズ』はただのラブコメと見せかけて、ちょっと意外な結末が待つ作品であり、同タイトルでジャック・ベッケル監督『穴』はいかにも男臭い、硬骨の脱獄映画で、どちらもお勧め。原作者ガイ・バートが執筆した『ソフィー』は読み直すつもり。
- 作者: ガイバート,Guy Burt,矢野浩三郎
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