FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アナザー Another/古澤健監督

 原作を読んだのは、数年前。死者の正体については覚えているが、細かいルールは忘れている……と思って調べてみると、原作、漫画、アニメ、映画で、それぞれ差異があるようだ。
 「ルール」の説明をすべて映画内でしていてはひどく冗長になるから、という理由だろうが、映画では結構大胆な解釈及び省略がされている。原作との最大の違いがあの人の扱いだろうが、ヒロイン見崎鳴に関しても、肉親に関わる情報を一部語っていないので、映画だけ見たという人は、なぜ鳴が冒頭で霊安室に現れたのか、なぜ彼女の母親があれほど狂的なふるまいをするのか、よく分からなかったに違いない。
 中学校のあるクラスに、なぜか紛れ込む死者。死者がもたらす災厄を避けるため、クラスから籤で選ばれた人間が便宜的に死者を務め、「いないもの」として担任を含めたクラス中から存在を無視される。
 転校生、榊原は「いないもの」として扱われる鳴と知り合い、親しくなっていく。そのためか、別の理由か、クラスでは惨劇が続き、死者が続出する。
 「孤立する少年少女の淡い恋」青春映画と、「情け容赦ない惨劇」ホラー映画と、大筋ではどちらも手を抜いていない。あのラストも含め、千曳には奇妙な迫力があった。しかし細部では、前述の霊安室に鳴がいた理由だとか、ものすごく唐突に明かされる死者の正体だとか、せっかくの恋月姫の人形なのにあまり効果的に使われていないだとか、残念な箇所がいくらかある。
 ホラーとミステリ、そこに青春と恋愛と豪華に内容を詰め込んだ映画としては、そこそこの出来だった。細部をもっと詰めていたならば、もっと完成度が上がっていたと思わせる惜しさがある。

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