うたかたの誓いと春の花嫁／メアリ・バログ

うたかたの誓いと春の花嫁 (ライムブックス)

　最近読み終わったばかりのサブリナ・ジェフリーズ『お気に召さない求婚』と少し設定が似通っているのだが、こちらの方がずっと面白かった。ヴィレッジブックスから出版されている゛ベドゥイン・サーガ゛が愕然とするほどつまらなかったので、やや不安だったが、「メアリ・バログ健在なり」と嬉しかった。
　サブリナ・ジェフリーズ『お気に召さない求婚』と少し設定が似通っていると前述したが、没落した貧しい家庭が爵位継承する、姉妹の身代りに自分が愛のない結婚をしようとする、やがて夫との間に本当の愛が芽生えるなど、ヒストリカルロマンスのテンプレート通りの話なのだが、登場人物達の心理の綾が巧みに表現されており、実に良かった。
　没落名門ハクスタブル家。両親亡きあと田舎で貧しい暮らしを送ってきた四姉弟だったが、突然長男の爵位継承が決まった。四姉弟の後見人、リンゲイト子爵エリオットは、長女マーガレットと結婚するつもりだった。しかしマーガレットに愛する男性がいることを知っていた次女、未亡人のヴァネッサは自分が身代りを申し出るのだった。
　ヒロインと虚弱な前夫とのエピソードもいい。
　当方にとってメアリ・バログの最高傑作は゛シンプリー・カルテット゛で動かないのだが、こちらも十分楽しめる。