FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

高慢と偏見、そして殺人/P・D・ジェイムズ

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


 ジェーン・オースティンは泉下で泣いているか、怒っているか、あるいは笑っているか。
 ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミスの『高慢と偏見とゾンビ』ではゾンビに乱入され、この『高慢と偏見、そして殺人』では身辺で殺人事件が勃発する(『高慢と偏見とゾンビ』は読んだことがないので、偉そうなことは言えないのだけれど)。エリザベスとダーシーは枕を高くして、寝られるときがなかなか来ないようだ。
 コニー・ウィリスピーター・ラヴゼイの作品で使われたジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』のように、『高慢と偏見』は創作家のパロディ心をくすぐるのかもしれない。
 エリザベスとダーシーが結婚して六年。壮麗なペンバリー館で夫婦は幸福に暮らしていた。ところが、ある嵐の夜、エリザベスの姉妹の中でももっとも人騒がせな妹、リディアが館へと駆け込んできた。森へと分け入ると、そこには惨殺死体と、リディアの夫ウィッカム(彼は曰くつきの人物で、リディアとは駆け落ち結婚した)の姿が。リディアとウィッカムを救うため、エリザベスとダーシーは真相を追う。
 法廷物プラス謎解きものだが、内容は……少々かったるい。P・D・ジェイムズを、あるいはジェーン・オースティンを読み慣れていない人間にとって、殺人事件が起きるまでの章をはっきり退屈だと感じるかもしれない。
 館の美しい描写はたっぷりと楽しめるし、殺人事件の真相もまあまあだ。
 しかし、英国ミステリが好き、P・D・ジェイムズが好きという人以外には薦めにくい。『高慢と偏見』のファンが喜ぶかどうかも微妙だ。
 本当にそうなのかどうかは分からないが、P・D・ジェイムズの余技めいた一冊。

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

↑不朽の名作
高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

↑いつかは読みたい