FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

粛清/ソフィ・オクサネン

粛清

粛清

 エストニアを舞台にした小説を読むのは初めてである。傑作ホラー映画ジャウム・コレット=セラ監督『エスター』にも、エストニアの病院の場面が出てくるが、ほんの一場面だし。
 エストニアの小村に暮らす老女アリーダは、ソビエト統治時代に行った行動のせいで、村人から忌み嫌われている(アリーダはなにもので、過去になにをしでかしたんだ)
 アリーダは、ある日、庭に若い娘が倒れているのを見て、なにかの罠かと怪しみつつも、助けて家の中で看病する。娘はザラと名乗った。どうやら、なにものかに追われているらしい(ザラはなにもので、過去になにをしでかしたんだ)
 ある男の手記の断片を交えながら、アリーダとザラ、年代の違う二人の女性の過去が少しずつ明らかになっていく。二人の意外な結びつきが明かになり、ある危機が迫ったとき、アリーダはある行動を決断するのだ。
 エストニアという小国家が辿った過酷な歴史と、その国で生きる、あるいは生きてきた国民の過酷な人生が描かれている。ミステリとして書かれたものではないものの、少しずつ二人の女性の情報を開示し、緊迫感を高めていく様子はサスペンス性十分で、そのジャンルのファンにもアピールする力を大いに有している。
 とても面白かった。
 余談だが作者ソフィ・オクサネンは、フィンランド人とエストニア人の父母を持つ。特異なメイクと衣装から、「北欧の文学的レディー・ガガ」と評されているようだが、顔写真のみではその全貌を掴むことはできない。残念だ。

エスター [DVD]

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