FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ガストン・ルルーの恐怖夜話/ガストン・ルルー

 

最近読んだ、岩波少年文庫より出版されている、金原瑞人編集、翻訳の『八月の暑さのなかで――ホラー短編集』を読み、改めて古典的な怪談の面白さに感じいった。
 昔一通り読んだはずだが、改めて読み直そうと思い、まず手に取ったのが、この『ガストン・ルルーの恐怖夜話』。情けないことに、内容はすっかり忘れていた。しかも意外なことに、超常現象はほとんど出てこない。おおもと人間の恐ろしさ、いかにもおフランスらしく(偏見か?)男女の純愛、そうでなければ男女の痴情のもつれが怪異の原因となっているものが多い。
 もっともその血生臭さ、グロテスクさは相当なもので、それほど生々しい表現をしているわけではないが、人体破損やカニバリズムが平気で出てくる。
 「金の斧」、「胸像たちの晩餐」、「ビロードの首飾りの女」、「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」、「ノトランプ」、「恐怖の館」、「火の文字」、「蠟人形館」の八つの短編が収録されているのだが、斧を恐れる上品な老婦人の謎を描いた「金の斧」、作者が徹底的に悪乗りしている「胸像たちの晩餐」、そして結婚した男性が次々と生命を失う美女「ノトランプ」……笑っていいのか、脱力していいのか分からない落ちがあるのだ……の三つが魅力的だった。
 これも面白かったが、次は幽霊が出てくるものを読もう。

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

岩波少年文庫から出ているのだが、手加減なし。これでトラウマを負うか、怪談の虜となったものがいるはず