暗殺のハムレット/ジョー・ウォルトン
- 作者: ジョー・ウォルトン,茂木健
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/07/27
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大評判を取った、「ファージング」シリーズの二作目。一冊目の『英雄たちの朝』は、面白いことは面白いのだが、カーマイケル警部補のラストで取った行動が好きになれなかったため、「うーん」と悪い意味で唸ってしまった。
『暗殺のハムレット』では、カーマイケル警部補は、さらにおぞましい運命に巻き込まれているのだが、エンターテイメントとしての力は『英雄たちの朝』より、さらに素晴らしかった。歴史改変小説にほとんど馴染みのない当方をも、存分に楽しませてくれる。
『英雄たちの朝』が、アガサ・クリスティーを連想させられる本格ミステリ風ならば、こちらはある計画が実現するかいなかを見守る犯罪小説だ。
シリーズ第一作と同様、カーマイケルと、その作品のヒロインが、交互に語り手を務める。この作品のヒロイン、ヴァイオラも、『英雄たちの朝』のヒロイン、ルーシーと同様、上流階級の出身で、やはり同じ身分の人々に違和感を感じている。
ドイツと講和条約を結び、平和を手にしたイギリス。ドイツと手を組むことを選んだ政治派閥「ファージング・セット」は国家権力の中枢にあり、しかも人々の生活を圧迫するようになっていた。
男女逆転の『ハムレット』の舞台に挑もうとしている女優ヴァイオラは、イギリスの名門貴族ラーキン家の六姉妹の三女だ。もっとも家は捨てている。他の姉妹たちは、ナチスの高官と結婚したものから、筋金入りのコミュニストまで様々だ。
この『ハムレット』を、ナチス総統とイギリス首相が観劇することとなった。そして、ヴァイオラは恐ろしい計画に巻き込まれることとなった。どんな計画かと言えば、この著書のタイトルから察せられる通り。
ヴァイオラが、そしてカーマイケルが辿り着くラストは、なんとも皮肉で切ない。
シリーズ最終巻『バッキンガムの光芒』を読むのが楽しみ。
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