四隅の魔／三津田信三

四隅の魔 死相学探偵2 (角川ホラー文庫)

　他人の身体に現れる死の影を読みとることができる死相学探偵、弦矢俊一郎シリーズの第二作目。祖母や猫や刑事との軽妙なやり取りがいかにもシリーズものっぽくなっている。
　作中に出てくるローシュタイン卿の実験は知らなかったが、雪山の遭難の階段については聞いたことがある。隅の婆様も知らなかった。あの地下室でも儀式の場面は、恩田陸『六番目の小夜子』の学園祭の場面並みに怖かった。が、謎解きの部分はかなりありふれたものだった。『十三の呪』のときのような、聞いた瞬間に腰から全ての力が抜けていくような、衝撃性が感じられない。おそらくミステリ読みならば、皆が頭に浮かべる解決ではないだろうか。
　城北大学の大学生、＜百怪倶楽部＞に集う若い男女を死が襲う。人死にが出たという寮の地下室で儀式「四隅の間」を行ったのが悪かったのか。それともこの部屋で以前に生命を失った女性の呪いなのか。儀式に関わった学生達の身辺に現れる黒い女はなにものだろうか。
　びっくりするほど不吉な謂われのある部屋で、びっくりするほど不吉な儀式を行った学生達が、びっくりするほど怖い目に遭うお話。前述の通り、序盤の儀式のシーンのもたらす恐怖はなかなかのもの。ここにこの小説の面白さは集約されている。