出られない五人/蒼井上鷹
出られない五人―酩酊作家R・Hを巡るミステリー (ノン・ノベル)
- 作者: 蒼井上鷹
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2006/09
- メディア: 新書
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初めて読む作家。名前は「あおい・うえたか」とルビをふるのだと初めて知った。
東京郊外のビル地下にあるバー「ざばずば」に五人の男女が集った。表向きは、急逝した作家アール柱野の追悼のため。しかし彼ら五人は様々な思惑を秘めており、そして実はバーに存在していたのも(生者死者問わず)彼らだけではなかった。やがて彼らの前にある死体が転がることとなるのだが、自分達の抱える事情のため、彼らはろくに動くことができなかった。
感情移入できる人間、一人もなし。かえって珍しい小説である。いや、一人もいないことはないのだが、出てきた次の瞬間にはおかしな奴になってしまうか、**てしまうか、どちらかである。どこにでもいるであろう安っぽい人間(犯罪行為につながるほどの卑近さと卑屈さの持ち主)が、とにかくぞろぞろと出てきて、身勝手な心のままに動く……ストーリー展開は小さなツイストの連続技が効いていて面白いことは面白いのだが、登場人物のすべてがこれではちときつい。密室を舞台にしたサスペンスは好きなはずなのに、小説の中に入り込めずに終わった。
読むものに疎外感を与えるミステリ。もっとも色んなサイトを巡ってみたところ、「蒼井上鷹の作品の中でも、これはもう一つ」という声がそこそこ多いので、「最初の一冊」としての選択を間違ったのかもしれない。もう一、二冊読んでからこの作家への評価を定めたい。