偽りのレベッカ/アンナ・スヌクストラ
いつも体調の悪い二月だが、ドット・ハチソン『蝶のいた庭』、そしてアンナ・スヌクストラ『偽りのレベッカ』、立て続けに傑作ミステリを読むことが出来て嬉しい。味わいはずいぶんと違う。
去年読んだジェイン・ハーパー『渇きと偽り』も秀逸なオーストラリア産ミステリだったが、このアンナ・スヌクストラ『偽りのレベッカ』も優れたオーストラリア産のミステリである。それも、全身の産毛が逆立つような、某所で思わず「ぎゃああ」と叫びたくなるような、怖いサイコサスペンス。
突如消えた十六歳の少女レベッカ。十一年後、万引きで捕まった家出娘のヒロインは自分のことをレベッカ当人だと言い張った。自分は誘拐され、記憶を失ったレベッカだと。事実は違っており、彼女はレベッカではなく、なぜ本物のレベッカが失踪したのか知らなかった。レベッカの家族、父母と双子の弟たちはレベッカを名乗る、レベッカに似た嘘つきヒロインを優しく受け入れた。まったく疑う様子はなく、本当に本物のレベッカなのかと問いただす様子もなく。
この偽物女にとって都合にいい肉親の態度は、読む者に強烈な違和感を与える。強烈な違和感と、そして恐怖を。やがて偽物女のヒロインもレベッカ失踪の真実を知ることがなる。
替え玉物・・・・・・という言葉を今でっちあげた・・・・・・にして、自分が偽物だと分かっている偽物の視点から描いた希有のサスペンス。
とにかく怖い。そして面白い。傑作。