きみはぼくの母が好きになるだろう/ネイオミ・A・ヒンツェ
奇妙な世界さん
がtwitterで紹介をしていらしたゴシックサスペンス。ハヤカワ・ノヴェルズから1971年に出版された作品。青木久恵が翻訳しており、訳者あとがきによってアメリカにおけるゴシックロマンの人気に触れている。この分野の特徴は書き手も読み手も女性も大部分であること、そして男性が作者である場合も女性名義を使うこと(この作品の作者は女性)。なんだか現在のロマンス小説に近い感じを受ける。
『きみはぼくの母が好きになるだろう』は、夫に先立たれた気弱な若妻フランシスカがオハイオ州にある夫の実家である大邸宅を訪ね、妊娠中である彼女本人の体調と洪水という天災によって、屋敷に軟禁されることとなる物語である。
タイトルの『きみはぼくの母が好きになるだろう』はフランシスカが生前の夫に言われた台詞なのだが、フランシスカには母が不気味な存在にしか見えず、母はフランシスカを好いているようには見えず、また問題のある夫の妹もいた。我が子のためにもフランシスカは生き延びようと奮闘する。古めかしいゴシックサスペンスの印象を受けるが、犯罪を構成する要素には現代的なものが仕込まれている。
ロマンス要素もあり、フランシスカの成長物語でもある。なかなか楽しい一冊。