お嬢さん/パク・チャヌク監督(ネタバレあり)
パク・チャヌク監督『お嬢さん』のネタバレがあります。まだ見ていない方はご注意ください。
リンゴ・シエ監督『屍憶 −SHIOKU−』を見たとき、東洋である台湾を舞台にしたゴシックホラーも「いいな」と思った。パク・チャヌク監督『お嬢さん』を見たとき、朝鮮を舞台にしたゴシックミステリも「いい!」と思った。舞台は日本統治時代の朝鮮である。
これは侍女に扮した詐欺師の少女と資産家の令嬢との騙し合い(と共闘)を描いた、パク・チャヌク監督の畢生の大作たるミステリ映画。詐欺師と令嬢、この二人の女性同士恋愛映画、官能映画という側面も強い。後半の奇怪で倒錯した「朗読会」も含め、始終耽美的な雰囲気が漂っている。
去年この作品を鑑賞していたら、自分の中でこの映画とオリオル・パウロ監督『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』が首位を争っていただろう。
サラ・ウォーターズの時代ミステリ『荊の城』を原作としており、設定やストーリー展開が変わっているのだが、そのアレンジがとてもうまい。浮世絵の使い方もうまい。
終盤での男性同士の戦いとその決着もついニヤリ。145分という時間がまったく気にならない。頽廃と清冽が溶け合った正真正銘の傑作である。