凍った夏/ジム・ケリー
2017度のベストミステリが2つまで決まった。ジェイン・ハーパー『渇きと偽り』、そしてこのジム・ケリー『凍った夏』である。奇しくも「フーダニット」がぞんぶんに堪能できる、どちらも優れた海外の本格ミステリである(あと一冊ぐらい、優れたサスペンスが来ないだろうか)
『凍った夏』は『水時計』、『火焔の鎖』、『逆さの骨』に続く<フィリップ・ドライデン>シリーズの4作目。
極寒に襲われた沼沢地の都市イーリー。寂れた公営アパートで暮らす男性の凍死は当初平凡な事件のように思われた。しかしドライデンが調査を重ねるほど事件は複雑さを増していき、殺人事件は一件では終わらず、やがてドライデン本人の過去ともつながりがあることが分かってくる。
最初はありふれた事件を扱ったありふれたミステリのように感じられるが、ドライデンの調査が進み、物語の真実に近付き、ページが終わりに近づくほど面白さが増していく。幾層もの事実を積み上げ、なぜ被害者たちが殺されたのかを知ったときには、愕然とした感情とともに怒りが湧いてくる。ドライデンとこれまで痛ましさを感じることが多かった愛妻ローラとの関係もまた別の面を見せる。
ひどい寒さに覆われた沼沢地の描写もいい。傑作。