死後結婚 サーフキョロン/岩井志麻子
ハードカバー版で読んだ。作中にも登場人物の台詞として出て来るが、帯の「死者の口には真珠を入れる。黄泉の道を行くとき口中で、仄白く照らしてくれるから」という文章が美しく、イメージ喚起力に富んでいる。
黄泉の漆黒の闇、生命を失ったためやや青みを帯びた死者の朱唇、その中で蛍火のごとくほのかに光を放つ真珠がふと目の先に浮かぶ。
日本・台湾合作ホラー、リンゴ・シエ監督『屍憶 SHIOKU』でも効果的に使われていた冥婚、その儀式を描いた恐怖小説である。
かの映画では舞台は台湾だったが、こちらは韓国でおそらく儀式も韓国風もなっている。
育ちのいい若い女性、京雨子(きょうこ)。彼女は知り合った在日韓国人の美女、沙羅から韓国行に誘われる。謎めいた自殺を遂げた内縁の沙羅の夫、江原との死後結婚を韓国で執り行いたい、それに立ち会ってくれと言われたのだ。
江原から沙羅がDVを受けていたと聞いていた京雨子は、死後とは言えその夫と正式に結婚したいと言われ奇妙な気もしたが、沙羅に憧れていたこともあり、承諾した。
その辺りから京雨子の周囲でも怪異が続き、生者と死者の境目があいまいになっていく。そして死後結婚を行うため女二人は韓国に旅立つが、それはさらなる恐怖、さらなる怪異との出会いも意味していた。
耽美とグロテスク、そして恐怖が入り混じった物語。作者お得意のエロスもある。