FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

カーターフック屋敷へようこそ/ギリアン・フリン

 ジェーン・オースティンが『ノーサンガー・アビー』でゴシック小説をパロディにしたように、ギリアン・フリンの『カーターフック屋敷へようこそ』でゴシックホラーをパロディ化している。ヒロインはハンドサービス(風俗関係)兼占い師。ちなみに前者は男性を、後者は女性を顧客にしているが、雇い主は同一人物だ。幼いときには、怠惰で貧しい母親に物乞いを強制されてきたヒロインは、ほら話をでっちあげる力と、金を落としてくれそうなカモを見分ける人間観察力を活かし、現在の仕事に就いた。
 占い師という肩書きで、もっぱら裕福な女性たちのセラピストめいたことをしているヒロインは、顧客の女性から、自分の邸宅へと誘われる。女性の夫と、夫との間の実子と、そして継子である思春期の少年が暮らす館だが、夫は不在だった。そして邸宅にはなんとも言えぬ不気味な雰囲気が漂っていた。
 女性はヒロインにある疑念を打ち明ける。少年はある考えをヒロインに打ち明ける。
 はたして屋敷の中で正しいことを口にしているのは誰なのか。
 粋でスリリングなサスペンス小説。この作者のものとしては、後味もそれほど悪くない。