FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

さまよう記憶/サンドラ・ブラウン

 最近いま一つ琴線に触れる作品のなかったサンドラ・ブラウンだが、久しぶりにやってくれた。
 ロマンス小説としても、サスペンス小説としても、すごくいい。おそらく今年読んだロマンス小説、サスペンス小説の中でベストファイブに入ると思う。そしてサンドラ・ブラウンの数多い著作の中でも、かなり上位の方に食い込むのではないだろうか。
 ロマンスはいつも上手いサンドラ・ブラウンだが、この作品はミステリに関するもかなり出来がいい。事件に関わる情報を小出しにしつつ、物語を進め、クライマックスであっと言わせる。こうきたか!
 エモリ―は資産家の娘で、優秀な小児科医。夫のジェフリーとの関係は冷めきっており、物語の最初のうちエモリ―は知らないが、ジェフリーはアリスという女性と浮気している。マラソンの練習の最中、頭部に衝撃を受け失神するエモリ―。頭に大怪我をしたエモリーは、山小屋で目覚めた。男はエモリ―を介抱し、悪天候から守ってくれたが、自分のことはなにも語らず、エモリ―にも外部の人間との一切の接触を赦さなかった。
 やがてエモリ―の失踪が注目を集め始める。
 某登場人物と某登場犬の今後の幸福を祈りたい。ベテラン作家がその実力をいかんなく発揮した傑作。