FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

仮面の町/ジョン・バーレー

 存在は気になっていたが、初めて手に取るハーパーBOOKのミステリ。翻訳ミステリー大賞シンジケートで、上條ひろみさんが面白いと書いていたので(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20160505/1462403505)購入した。
 読んで驚いた。
 ありふれたサイコサスペンスにように見えるが、ちょっと妙な、そして面白い展開が待っている。それも犯人が分かったあとに。犯人自体は見当がつくものだが「えっ、ハンドルをそちらに切るの?」と目を見張る。意外性があると同時に、生々しい展開でもある。
 ウィリアム・ランデイ『ジェイコブを守るため』みたいな話になるかと予想していたのに、いい意味で裏切られた。
 アメリカ合衆国オハイオ州、郊外の小さな町。尋常ではないほど、切り刻まれた少年の死体が発見された。平和だと信じられてきた町に、人の形をした獣が暮らしていたのだ。やがて少女が第二の被害者として発見される。監察医で、自分自身、二人の子を持つベンは事件解決を願い、奔走するが、やがて恐ろしい事態に巻き込まれていく。
 作者本人も医師だけに事件に直接絡まないエピソードも、どぎついほどのリアリティがあり、楽しい。
 秀作。