二人のウィリング/ヘレン・マクロイ
魅惑的な出だしと、いささか期待はずれな結末を持つ一作。怪作と呼んでもいい。最後に犯人の造形を知り、脱力感とともに「ヘレン・マクロイもこんな発想するんだな」という妙な感慨を覚えた。
精神科医ベイジル・ウィリングもののシリーズ作品である。自宅近くにのタバコ屋でウィリング当人が見かけた、ベイジル・ウィリングだと名乗る男。慌ててあとを追うウィリング。つけていった先の家で男は死んだ。彼はなぜウィリングを名乗り、そして誰によって殺されたのか。
例によって例のごとく、暗く甘美で私的な文章で綴られるミステリである。しかし犯人の正体はマクロイの作風からはちょっと考えづらいものだ。マクロイの作品群の中の異色作。