FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

愛と悲しみの貴婦人/モイラ・クレアモント

愛と悲しみの貴婦人 (扶桑社ロマンス)

愛と悲しみの貴婦人 (扶桑社ロマンス)

 「ヴィクトリア朝期の暗部を背景に、狂おしいばかりの情熱が交錯するゴシック風味満点のヒストリカル・ロマンス!」が謳い文句のロマンス小説である。読んで思わず首を傾げた人間もいるだろう。ちなみに作者は、「ブロンテ姉妹の生まれ変わり」と評されることもあるそうだ。やはり読んでから思わず首を傾げた人間もそうだろう。私もその一人である。
 「ブロンテ姉妹の生まれ変わり」にしては文学性が薄く、ヴィクトリア朝を舞台にしたメロドラマのノベライズを読んでいる印象のロマンス小説だ。ロマンス小説というカテゴリーにおいては、ヒロインの陥る境遇の悪さ(精神病院に幽閉されて虐待!)は驚くべきものだが、そこから救助されてからの描写が薄い。薬物中毒のはずなのに。
 ヴィクトリア朝。軍人として赴いたインドから母国イギリスに帰ったイアンは愕然とした。幼馴染にして初恋の女性、そしてインドで亡くなった親友ハミルトンの妻エヴァが、幼い息子を失った衝撃で発狂、精神病院に幽閉されているという。イアンは、劣悪な環境の精神病院からエヴァを救い出そうとする。
 あらすじをかいつまんでみると面白そうなのに、実際に読んでみるといま一つだった。