日時計/シャーリイ・ジャクスン
シャーリー・ジャクスンのこれまで訳されていなかった長編、しかも「屋敷もの(当然、いわくつき)」で、『丘の屋敷』と『ずっとお城で暮らしてる』が大好きな当方にはとても嬉しかった。
読みながら、いかにも魔女シャリ―・ジャクスンらしいタッチに痺れるが、同時になぜこれまで翻訳されなかったのも分かる気がした。訳者の解説にもあるのだが、話がびっくりするほど唐突なところで終わる。正直なところ、この幕切れには当惑した。
しかし、前述の通り、彼女らしい魅力、彼女らしい毒気は存分に漂っている。屋敷の美しいながらも、どこか忌まわしさを秘めた雰囲気、そして登場人物たちに対する容赦のない描写。
広大な庭園を持つある邸宅(以前、十五歳の少女が両親と二人の弟を殺したとされている)で、当主の息子が死んだ。邸宅を誰にも渡したくないため、母親が実の息子を殺めたと死んだ男の妻は主張するが、誰もそれを肯定しなければ否定もしない。
死んだ男の母親は、さっそく暴君のように振る舞い出す。ずっと冷遇されてきた当主の妹は、亡き父の亡霊を見、この世はもうすぐ終わりを迎えると告げられた。
不気味で、神秘的で、美しい小説。
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 文庫
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