FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

秋の城に死す/モンス・カッレントフト

 最初のうちは存在そのものが珍しかった北欧ミステリだが、これだけ紹介が進むと「これってどんなシリーズだったかな」、と頭を悩ませることになる。
 モンス・カッレントフト。スウェーデンの作家で、女性刑事モーリン・フォシュを主役とした『冬の生贄』と『天使の死んだ夏』がすでに邦訳されている。読んだが、正直に言って、それほど強い印象は受けなかった。この四季シリーズの三作目、『秋の城に死す』が一番いい。そしてなぜか女性だとばかり思い込んでいた作者が男性だと知り、ものすごく驚いた。
 貴族の館スコーグソー城。城を買い取ったため新しい城主となり、そして殺人事件の被害者となった男は、貧しい家庭の出自ではあったが、その天才性と冷徹さ(冷酷さ)でのし上がった男だった。当然ながら、以前の城の持ち主をはじめ、様々なところで恨みを買っていた。
 一方、事件の捜査に当たるリンショービン市警の面々も、私生活の上で大きな悩みを抱えていた。
 特にヒロインのモーリン。アルコール依存症がひどいものとなっており、刑事としての職務を危ういものにさせ、家族との間に亀裂が入ってしまう。いや家庭に亀裂が入ったからこそ、そして刑事という仕事を愛しながらも強いストレスを感じているからこそ、アルコールに逃げたのか、嫌な鶏と卵のような関係である。モーリン、大丈夫か。仕事をクビにならないか。
 事件関係者たち、そしてその事件を捜査するものたちもほとんどが家族関係に問題を抱えており、北欧ミステリにありがちな陰鬱さが濃く漂っている。
 最後の最後である人が起こした行為には怒りを覚えた。その人のかつての言動が事件の原因のすべてではないが、原因の一つではある。そんなことをする権利があるのか。