FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

天国でまた会おう/ピエール・ルメートル

 ピエール・ルメートルは私にとって判断が難しい作家だ。
 『その女アレックス』は面白かった。『死のドレスを花婿に』は途中で投げた。デビュー作である『悲しみのイレーヌ』は最後まで読んだが、いま一つ琴線に触れるところがなかった。
 正直に言って、最後まで読み通せるかな、と思いながら手に取った。これだ。これがピエール・ルメートルの作品の中で、一番いい。
 第一次世界大戦後のフランスを舞台にした犯罪小説で、一種のピカレスクロマンである。戦争で深い傷を負い、戦後も居場所を失った二人の青年アルベールとエドゥアール。しかもエドゥアールは顔面に深い傷を負い、他人が驚くような姿になってしまった。戦時中、青年たちの上官だったプラデルは野心と邪心に満ち、富豪だったエドゥアールの家庭に近付き、父親に取り入り、姉と結婚した。一方、二人の青年はある詐欺事件を起こそうとしていた。
 主要登場人物の大方が、犯罪に手を染め、人間関係はややこしく絡まり合っていく。二人の青年が暮らす家の大家の娘、快活なルイーズや、嫌われ者の役人メルランなど脇の人物もいい。
 サスペンス性と抒情性を兼ね合わせた犯罪小説。あのエピローグもいい。
 傑作。

↑文庫でも出ている。当方が読んだのはハードカバー。