FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

マザーハウス 恐怖の使者/アレハンドロ・イダルゴ監督

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 あな珍しやベネズエラのホラー映画である。やや風変りな「憑かれた家」テーマの作品。
 ある一軒家で、夜に起きた事件。夫が殺され、幼い息子が失踪し、妻であり、母である女が無罪を訴えているにも関わらず、二人を殺したとして逮捕された。
 三十年後、老女となった女は出所し、惨劇のあった我が家に帰ることになる。相変わらず息子は見つからない。定期的に訪ねて来る神父に対し、女はこの家に越してきたときから、惨劇が起きる晩までを語る。
 かつては二人だった息子が、一人になった経緯。そして姿の見えない襲撃者に一家が襲われた謎の事件。そののちに起きた夫の死と息子の失踪。同時に老女となった女は同じ家で、いるはずのない老齢の男性の影を見るのだ。
 現在と過去が交互に語られ、老女の回想話を聞きながらも、神父は家の歴史を調べる。なんとも奇妙なことに、この家では過去の住人がときどき神隠しのように消えていた。
 この家は古びた屋敷で映画の幕が開く以前には住人はおらず、政府だか公共団体だかが、貧しい主人公一家に貸してくれることになったのだが、こんな妙な家を貸すなよ、と思う。神父もちょっと調べただけで、うさんくさい住人失踪事件に辿り付いているし。
一見正統派のゴシックホラー映画。だが前述の通り、怪異の正体にちょっと捻りがあって、真相を知ると「あのシーンはそういう意味か!」と思わせる。答えを言ってしまうと、「この屋敷は内部の時間の流れ方がおかしい家で、かつて一家を襲った姿の見えない襲撃者は、老女となったのち、時間を遡ったヒロイン自身だった。夫が息子を殺そうとしていることに気付き、夫を殺し、息子を本来とはまた別の時間軸へと連れて行く」。
 しかし怪異の正体がこれだとすると、それ以前に消えた住人の皆さまはどうなったんだろう。やっぱり悲惨な運命をたどったんだろうか。
 秀作。